現場から(2021年4月~2022年3月)

2021年4月から2022年の3月までの1年間の活動について簡単にご紹介します。

この1年間の目標は、次の2点でした。

1)ギザ遺跡・クフ王の大ピラミッド脇の船坑から、木の部材やテキスタイルなどすべての遺物を取り上げ、これ以上壊れることのないように応急処置を施したうえで測量をし、「大エジプト博物館保存修復センター」に運び込むこと。

2)船を組み立てる準備をするために、船坑の周辺に建てていた施設を解体して「大エジプト博物館」の敷地の中に移築して、「復原準備作業場」を整備すること。

コロナ禍は続いていましたが、日本人スタッフがエジプトに何とか渡航できるようになり、現場にも以前と同じ活気が戻ってきました。船坑から取り上げた部材の数は、全部でおよそ1700点。船坑は下の写真のようにきれいに空となりました。取り上げた部材はアクリル樹脂を使って応急処置を施し、「大エジプト博物館保存修復センター」の収蔵庫に運び込みました。木の部材の状態が大変悪かったため、2013年から長い年月を費やすこととなりましたが、ギザ遺跡での発掘と応急処置というテーマをようやく終えることができたのです。

空になった船坑
「大エジプト博物館保存修復センター」に運んだ木箱入りの部材〔エジプト人スーパーバイザーのアイーサさん(左)とマムドゥーハさん(右)〕

ここからは、船を組み立てて復原することにプロジェクトのテーマは移ります。私たちの船は、すでに組み立て復原が終わっているクフ王第一の船とともに、建設が進んでいる「大エジプト博物館」に隣接する別館で公開展示されることになっています。でも、私たちの第二の船の木の部材は大変弱くなっており、変形もしているため、博物館の中ですぐに組み立てることはできません。船ができた当時の形に部材を戻し、できる限りの強化処理をもう一度施し、骨組みを加えて船全体を補強する必要があるのです。私たちはそうした作業を行う「復原準備作業場」を、「大エジプト博物館」の敷地の中に作る計画を立てました。

建設中の「大エジプト博物館」

私たちは2009年、ギザ遺跡の船坑を保護するために、その上に長さ44メートル、幅20メートルの大型のテント倉庫を建てていました。これは外務省の草の根文化無償資金協力の支援を得て、日本の太陽工業株式会社の製品を輸出したものでしたが、まだまだ健在で再利用が可能でした。私たちはこれをいったん解体し、「大エジプト博物館」の敷地の中に運び、再び組み立てて「復原準備作業場」を作りました。それ以外にも、事務所として使っていたプレハブ小屋を移築するなど、施設の撤去は結構大掛かりな作業となりましたが、2022年3月までに大型テント倉庫の躯体の工事は完了しました。

ギザ遺跡で解体中の大型テント倉庫
大エジプト博物館敷地内に運んだプレハブ事務所
大エジプト博物館敷地内で建設中の大型テント倉庫
躯体の竣工した大型テント倉庫=「復原準備作業場」

(2023年8月、黒河内宏昌)

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